みなさんは自分の歯の形について考えたことがありますか?
口元の見ためが気になる場合、どうしてもまず歯並びに目がいってしまいがちですが、口元の審美性を左右する要素は決して歯並びばかりではありません。
例えば歯の色、特に虫歯や色素沈着で部分的に色が濃い場合はその部分が陰になって凹んでいるように見えることがあります。また歯並びが良くても顎の骨の形や歯ぐきと唇とのバランスで出っ歯に見えてしまう場合もあります。
中でも見落としがちなのが歯の形です。顔の形に丸顔さんや面長さんがいるように、歯にも丸っこい形や縦長い形があります。
それでは実際にどう見た目に影響するのか下図をごらんください。
A・B・Cの三つのパターン、右は各上顎の歯列を取り出したものです。いずれも健康な良い歯並びで、歯のサイズや並びはどれも同じです。でも、B・Cはなんとなくすきっ歯に見えますね。
では一つずつの歯の形を見てみましょう。
Aは標準的な四角っぽい形の歯です。Bは歯の真ん中辺りのふくらんだ樽(たる)型、Cは歯の先端が広がった三角型の形をしています。四角はまっすぐ横に並べても隣同士平らな面で接しますので隙間は出来ませんが樽や三角だと出っ張った部分で、どんなにくっつけても隙間があるように見えてしまうのです。
しかし、これはあくまで見た目だけの問題ですので、奥歯や全体の咬み合わせが良ければ、このままでまったく問題ありません。要は本人が気になるかどうかです。
もし、気になるという場合には以下のストリッピングという方法で見た目を緩和することができます。
<樽状歯のストリッピング前後>
<ストリッピングの手順>
1)まず、矯正治療で歯を完全に一列に並べ、隙間も閉じます。
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2)歯の出っぱって隣の歯との接している部分を少しだけ削ります。
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3)削った部分の隙間を矯正治療でとじます。
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4)隣の歯との隣接面が広くなったので、隙間が目立たなくなりました。
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<ストリッピングの注意事項>
さて、上記のストリッピングですが、ごくわずかとはいえ、歯を削るわけですから、なんでもかんでも出来るというわけにはいきません。いくつかの条件をクリアした上で、慎重に行う必要があります。
- 歯を削る量はエナメル質の厚みの半分以下。一本あたり0.5ミリ程度。削りすぎてエナメル質が薄くなりすぎると痛みがでることがあります。
- ストリッピングを行うと歯の幅が小さくなる分、歯列アーチ全体も小さくなります。上前歯の場合、下前歯との咬み合わせに注意が必要。
- 一度にたくさん削りすぎない。急にエナメル質が薄くなると、しみて痛くなることがあるので、何度かに分けて行う。
- 削った面がまっすぐになるように。削った面にでこぼこや段差があると、隙間が残ってしまったり、歯垢が溜まりやすくなります。
ストリッピングは先に述べたような見た目の隙間感を緩和するだけでなく、上下の歯の大きさのバランスが合わず歯が出て見える場合などにも有効です。
ただ、健康な歯を削るというとやはり抵抗のある方も多いと思います。しかし、上記に気をつけてきちんと経過を見ながら、ストリッピングを行った場合、まず問題が起こることはありません。それでも、抵抗がある場合には、もちろん行う必要はありません。あくまで見た目の問題ですので、ご本人が気になるかどうかが一番大事なことです。