前回に続きまして今月も症例のご紹介です。 |
歯周病ですでに数本の歯を失っています。また、虫歯で治療中の歯もあります。 |
ここで、歯周病について少し説明しておきましょう。 |
歯周病による骨吸収が全体に広がっているのがわかります。特に上の前歯の病状が悪く、真ん中の二本は根っこの先まで骨が溶けてしまったため抜けてしまったのです。 |
真ん中の写真を見ていただければわかりますが、もともとは受け口(下顎前突)でなく、叢生、つまり凸凹の歯並びで俗に言う八重歯です。 |
たしかに元の歯と同じ形のブリッジにするのは下顎の歯が間に咬み込んでくるので、両脇の土台になる歯の負担が大きすぎます。また、下顎の歯と当たらないように一列に並んだ形でブリッジを作ると受け口になってしまいます。 |
要するに、この症例における、最大の矯正治療の目的は、「逆咬みになっている二本の前歯を下顎の歯より外に出す」ということです。 |
この、歯に加わる力ですが、矯正治療だけでなく、物を噛む力もかなりの負担になります。 |
さてではこの歯を動かすためにはどうしたらよいのでしょう? |
ポイント②の「歯が傾斜しないように」というのは、歯というのは移動させる際に単純に力をかけただけでは、傾斜しながら移動するのです。特にこのように歯周病で骨の量が減っている場合、比較的弱い力でもすぐに動きますが、その分大きく傾斜します。 |
こうならないためには力の方向と強さに細心の注意が必要であり、特殊な設計が必要になってきます。 |
けっして全部抜いて入れ歯にしたわけではありませんよ(笑) |
治療データ詳細
主訴:受け口 診断名:骨格性下顎前突 年齢:42y7m
治療装置:マルチブラケット装置 抜歯部位:非抜歯
治療期間:2年10か月 治療費:矯正管理料として50万円(検査料・処置料別途)
矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について:
① 最初は矯正装置による不快感、痛み等があります。数日間~1、2 週間で慣れることが多いです。 ② 歯の動き方には個人差があります。そのため、予想された治療期間が延長する可能性があります。 ③ 装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院等、矯正治療には患者さんの協力が非常に重 要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。 ④ 治療中は、装置が付いているため歯が磨きにくくなります。むし歯や歯周病のリスクが高まります ので、丁寧に磨いたり、定期的なメンテナンスを受けたりすることが重要です。また、歯が動くと 隠れていたむし歯が見えるようになることもあります。 ⑤ 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることがあります。また、歯ぐきがやせて下がること があります。 ⑥ ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。 ⑦ ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。 ⑧ 治療途中に金属等のアレルギー症状が出ることがあります。 ⑨ 治療中に「顎関節で音が鳴る、あごが痛い、口が開けにくい」などの顎関節症状が出ることがあり ます。 ⑩ 様々な問題により、当初予定した治療計画を変更する可能性があります。 ⑪ 歯の形を修正したり、咬み合わせの微調整を行ったりする可能性があります。 ⑫ 矯正装置を誤飲する可能性があります。 ⑬ 装置を外す時に、エナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する 可能性があります。 ⑭ 装置が外れた後、保定装置を指示通り使用しないと後戻りが生じる可能性が高くなります。 ⑮ 装置が外れた後、現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物) などをやりなおす可能性があります。 ⑯ あごの成長発育によりかみ合わせや歯並びが変化する可能性があります。 ⑰ 治療後に親知らずが生えて、凸凹が生じる可能性があります。加齢や歯周病等により歯を支えてい る骨がやせるとかみ合わせや歯並びが変化することがあります。その場合、再治療等が必要になる ことがあります。 ⑱ 矯正歯科治療は、一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。