今月は久しぶりに症例のご紹介です。
以前、歯の根っこが溶ける「歯根吸収」についてお話したときに、治療の途中ではありますが一部ご紹介した症例の患者さんが、先日やっと治療終了いたしましたので全体の経過に沿ってご紹介したいと思います。
まずはこちらの画像
以前のトピックス「2015年 10月 歯の根っこが溶ける!? -歯根吸収-」に掲載したものです。 こちらは治療の途中での画像ですのでまずは治療前のCTを見てみましょう。
両側の前歯の上に斜めに乗っかっているように見える歯は永臼歯の犬歯です。
本来は真ん中から3番目に生えるべき歯です。
外観を見て見ましょう。
一見普通の歯並びに見えますが、真ん中から3番目の歯は乳歯です。注意してみると右上の二番目の歯の歯ぐきが盛り上がっているのがわかります。
もう一度角度を変えてレントゲンを見てみましょう。3DCTは一回撮影すれば様々な角度から骨の内部を見れるところが非常に便利です。
やはり犬歯の位置が斜めにずれています。このまま放置すると2番目の歯の真上に生えてくるばかりか、2番目の歯の根っこが溶けてしまいます。
<犬歯が2番目の歯の真上に生えた症例>
<下の歯の刺激で歯の根っこが溶けていく様子>
この症例では両側の犬歯の位置に異常が見られますが、まずは今にも生えてきそうな右側の犬歯から移動を開始しました。
治療はリンガルアーチという装置を使って犬歯を本来の位置まで移動させていきます。流れとしては以下のようになります。
1、 犬歯を牽引する足場にするため奥歯に装置の固定源となるバンドを入れる。
2、 その奥歯のバンドにリンガルアーチをセットする。
3、 一般歯科で歯ぐきを被っている犬歯の表皮をブラケットが装着できる面積だけ切り取り(開窓)、
歯面を露出させてきてもらう。同時に乳歯の犬歯も抜歯してもらう。
4、 犬歯にリンガルアーチのアームをセットし後ろに移動させる。
詳しくは「2010年 12月 移転歯2 治療例」のトピックスと同じ流れになりますので、そちらをご参照ください。
<開窓してブラケットを装着した犬歯と 奥歯にセットされたリンガルアーチ>
五ヵ月後。
犬歯がほぼ所定の位置まで移動したところです。
CTで根っこの状態を確認します。
犬歯も2番目の歯も根っこは無事で、こちらは引き続き下の歯とともにきれいに並べていきます。
さて、問題は左の犬歯です。右より位置のずれが大きくほとんど1番目の歯の真上にあったため、このまま自然に1番目の歯の部分に生えさせる予定で経過を観察してきました。(1番目の歯に部分に犬歯を配列した症例は近日中にまたご紹介予定)
しかし、伸びてくる方向が悪く左の2番目の歯にも影響がでそうなことと、患者さんサイドに抜歯への抵抗感、また右側が予想以上にスムーズに移動し歯根の状態も良かったことから、左も正規の位置への移動を試みることになりました。
6ヵ月後。
左も無事移動してきました。
ここまでくればほぼ大きい山場は乗り切ったといえます。あとは全体のバランスを見ながらかみ合わせを整えていきますが、この左の1,2番の前歯は犬歯の影響で歯根が弱っているため細心の注意が必要です。犬歯の後方移動にひっぱられて2番目の歯の手前にスペースが開いていますが、これはできるだけ矯正力をかけないようにこの前月までこの2本には一切装置をつけないでいたため自然に開いてしまったもので、最終仕上げで注意深く閉じていきます。
正面と右からみたところ。あれほど位置のずれていた右犬歯もすっかり歯列に収まっています。
14ヵ月後。
治療完了です。治療開始からは2年2ヶ月です。きれいな歯のアーチに犬歯が収まっています。固定として歯の裏側に極細いワイヤーでとめています。
<治療前後のパノラマレントゲンの比較>
以前、歯の根っこが溶ける「歯根吸収」についてお話したときに、治療の途中ではありますが一部ご紹介した症例の患者さんが、先日やっと治療終了いたしましたので全体の経過に沿ってご紹介したいと思います。
まずはこちらの画像
以前のトピックス「2015年 10月 歯の根っこが溶ける!? -歯根吸収-」に掲載したものです。 こちらは治療の途中での画像ですのでまずは治療前のCTを見てみましょう。
両側の前歯の上に斜めに乗っかっているように見える歯は永臼歯の犬歯です。
本来は真ん中から3番目に生えるべき歯です。
外観を見て見ましょう。
一見普通の歯並びに見えますが、真ん中から3番目の歯は乳歯です。注意してみると右上の二番目の歯の歯ぐきが盛り上がっているのがわかります。
もう一度角度を変えてレントゲンを見てみましょう。3DCTは一回撮影すれば様々な角度から骨の内部を見れるところが非常に便利です。
やはり犬歯の位置が斜めにずれています。このまま放置すると2番目の歯の真上に生えてくるばかりか、2番目の歯の根っこが溶けてしまいます。
<犬歯が2番目の歯の真上に生えた症例>
<下の歯の刺激で歯の根っこが溶けていく様子>
この症例では両側の犬歯の位置に異常が見られますが、まずは今にも生えてきそうな右側の犬歯から移動を開始しました。
治療はリンガルアーチという装置を使って犬歯を本来の位置まで移動させていきます。流れとしては以下のようになります。
1、 犬歯を牽引する足場にするため奥歯に装置の固定源となるバンドを入れる。
2、 その奥歯のバンドにリンガルアーチをセットする。
3、 一般歯科で歯ぐきを被っている犬歯の表皮をブラケットが装着できる面積だけ切り取り(開窓)、
歯面を露出させてきてもらう。同時に乳歯の犬歯も抜歯してもらう。
4、 犬歯にリンガルアーチのアームをセットし後ろに移動させる。
詳しくは「2010年 12月 移転歯2 治療例」のトピックスと同じ流れになりますので、そちらをご参照ください。
<開窓してブラケットを装着した犬歯と 奥歯にセットされたリンガルアーチ>
五ヵ月後。
犬歯がほぼ所定の位置まで移動したところです。
CTで根っこの状態を確認します。
犬歯も2番目の歯も根っこは無事で、こちらは引き続き下の歯とともにきれいに並べていきます。
さて、問題は左の犬歯です。右より位置のずれが大きくほとんど1番目の歯の真上にあったため、このまま自然に1番目の歯の部分に生えさせる予定で経過を観察してきました。(1番目の歯に部分に犬歯を配列した症例は近日中にまたご紹介予定)
しかし、伸びてくる方向が悪く左の2番目の歯にも影響がでそうなことと、患者さんサイドに抜歯への抵抗感、また右側が予想以上にスムーズに移動し歯根の状態も良かったことから、左も正規の位置への移動を試みることになりました。
6ヵ月後。
左も無事移動してきました。
ここまでくればほぼ大きい山場は乗り切ったといえます。あとは全体のバランスを見ながらかみ合わせを整えていきますが、この左の1,2番の前歯は犬歯の影響で歯根が弱っているため細心の注意が必要です。犬歯の後方移動にひっぱられて2番目の歯の手前にスペースが開いていますが、これはできるだけ矯正力をかけないようにこの前月までこの2本には一切装置をつけないでいたため自然に開いてしまったもので、最終仕上げで注意深く閉じていきます。
正面と右からみたところ。あれほど位置のずれていた右犬歯もすっかり歯列に収まっています。
14ヵ月後。
治療完了です。治療開始からは2年2ヶ月です。きれいな歯のアーチに犬歯が収まっています。固定として歯の裏側に極細いワイヤーでとめています。
<治療前後のパノラマレントゲンの比較>