「なくて七癖」という言葉をご存知でしょうか?自分では癖なんか無いと思っている人でも、本人は気付いていないだけで、実は誰でも七つくらいは癖がありますよ、という意味の言葉ですが、みなさんはいかがですか?
というわけで、今月は歯磨きの癖、『磨き癖』のおはなしです。
日ごろから患者さんのお口の中を見ていて思うのですが、診療前にしっかり磨いてきたのに一箇所だけ汚れていたり、いつも同じ場所が磨き残っていたり、特に多いのが下の奥歯はピッカピカなのにそこ以外の場所が・・・、という患者さん方、残念でなりません。
我々は見慣れているので、歯を見ればどこに汚れが残っているか ある程度見分けられます。そこで、歯磨き指導をしましょうかという話になるのですが、歯医者に行くためにあらかじめしっかり歯磨きしてきた患者さんにとっては心外な話です。また、「今日はたまたま時間がなくて簡単にしか磨けていないだけで普段はもっとちゃんとできているのに!」とおっしゃる方もおられます。しかし、残念ながら、プロとして毎日ひたすら歯ぐきや歯垢を見ていれば、炎症や歯垢の熟成の具合で、その汚れが今日たまたま磨き残っているのか、そうでないかは分かってしまうのです。
こういった方は歯磨きはもちろん毎日きちんとしていますし、極端に歯磨きが下手なわけではありません。 歯磨きというのは毎日の習慣としてやや無意識的に行われる作業です。その分どうしても、我流になるというか、無意識に手を動かしやすいところや気になるところばかり長く磨いたり、磨いてはいるけれど時間が短い場所があったりしてしまうのです。これが『磨き癖』です。
つまりこの磨き癖さえ克服出来れば、格段に歯磨きの精度がアップし磨き残しは無くなるのです。
では、磨き癖を治すにはどうしたらよいのでしょう?まずは、自分の磨き癖を知ることです。
準備するものは歯垢染色剤(カラーテスター)とデンタルミラー(カラーテスターはネット通販、ミラーは百均や当院受付でも購入できます。)
いつもどおり磨いた後、歯垢染色剤(カラーテスター)で染め出してみましょう。ここであせってすぐに磨いてはいけません。どの場所に汚れが残っているかよく確認しましょう。これが磨き癖を知る第一歩なのですから。癖なので大体いつも同じ場所が残っているはずです。以下の方法にしたがって、染め出しを続けながら磨き癖を克服していきましょう!!
1日目
1.染め出さずに通常どおり歯磨きをする。
2.カラーテスターの使用法にしたがって歯垢を染め出す。
3.電灯の下で手鏡を使って磨き残しをさがす。歯の裏側はデンタルミラーと
手鏡を合わせ鏡にして映す。(暗いと見えにくいので、電灯の下で上を向いて
直接照らすか、手鏡で光を反射させながら見るとみやすい。)
4.歯の図に汚れが残っていたところにしるしをつける。
(歯の図は繰り返し使えるよう、しるしを鉛筆で書くか、あらかじめコピーを
とっておこう。)
5.鏡で確認しながら汚れを一箇所ずつ磨いていく。(歯磨き粉はつけないで!)
<よくある磨き癖>
6.染め出したときの汚れが多かった場合にはもう一度染め出して繰り返す。
(汚れの層があまりにも厚い場合、カラーテスターの色が浸透せず、また
一度磨いたくらいでは完全に落とせていないことが多いのです。)
2日目
1.染め出しせず、初日の磨き残しを思い出しながら磨く
2.歯垢を染め出す。
3.初日の磨き残しと今日の磨き残しを比べる
優 : 磨き残しゼロ
大変優秀!磨き癖はなおっているので、このまま継続しましょう。
一週間後、再び同様に染め出して確認し、良ければさらに期間を
あけて染め出し持続できていれば完璧です。
良 : 初日の磨き残しとは別の場所が残っている場合
磨き癖はとれていますが、全体を満遍なく磨くよう気をつけまし
ょう。前歯奥歯の裏表、噛合わせの面各ブロックを時間を計りながら
磨きましょう。(各ブロック15秒ずつ、磨き残しのあった部分や難しい
部分のあるブロックはプラス5~10秒)
三日おきくらいに染め出しをつづけましょう。
可 :量は減っているが、初日の磨き残しと同じ場所に残っている場合
磨き癖克服までもう一息。どうしたら残っている場所を上手に
磨けるか考えながら、よく鏡を見て磨きましょう。(ただし力を
入れすぎないように気をつけましょう)特にたくさん磨き残しがある
ブロックは、その部分から磨き始めましょう。克服できるまで染め出し
をつづけましょう。
不可:まったく同じ場所が同じくらい汚れている場合
磨き癖以外の問題があるかもしれません。(歯ブラシの動かし方
・歯の形態・モチベーション等)一度ご相談ください。
癖は自覚して直そうと思わなければ、直らないものです、この機会にぜひ一度、自分の磨き癖と向き合ってみてください。歯磨きさえ完璧に出来ていれば虫歯も歯槽膿漏も心配要らないのですから!